小説

「ブンナよ木からおりてこい」は弱肉強食の美しい世界の賛歌だ

子供の夏休みの宿題って、手伝ったりしますか?

我が家では、娘が小学校のころは、もう何をどう尽くしても、1人で宿題を終わらせられない子になってしまい、夏休みの宿題は、さながら、私の宿題でもありました・・・。

手伝うから、よくないという意見は、重々承知なのですが、放っておくと、本当に終わらなくて💦💦

本人が、中学生ぐらいになって、流石にそれが恥ずかしいことだと、お友達から指摘されて、心を入れ替えるまで続きましたね・・。

グッジョブ!!!お友達!!!

友達って偉大ですね・・。

さて、今回は、そんな不毛の夏に、子供の読書感想文にいいかな??と思って、ネットの口コミで惹かれて購入した、この作品の感想です。

結果的に、娘の心には全く刺さらず(笑)。

私の心には、今もこうして、紹介したくなるくらいの感銘を与えた作品となりました。

作者の水上 勉さんは、昭和36年に直木賞を受賞されている文学者ですが、教員として子供達に教えていたこともあり、その時の経験から、この作品を書くことで、母親や子供と共に、この世界の平和や戦争のことを考えてみたかったと綴っています。

ブンナよ木からおりてこい
水上 勉 作

あらすじ

・お寺の池で、土ガエルと共に暮らしている、トノサマガエルのブンナは、周りのカエルたちより遥かに、跳躍と木登りが得意で、それを自慢に思っています。

・前々からお寺にある、高い椎木のてっぺんまで登ってみたいと思っていたブンナは、ある晴れた秋の日に、仲間が止めるのも聞かず、その計画を決行します。

・登頂した椎木のてっぺんは、雷で折れており、その折れた部分は長い年月を掛けて、土が積もって、木の登頂分だというのに、小さな土の広場ができてました。

・自分だけの楽園だと、喜んだのも束の間、そこは獰猛で残酷な鳶(トンビ)のエサとなる哀れな動物たちが、一時、運ばれて、巣に連れて行かれるまでの仮置き場だったのです!!

・そこにはかわるがわる、鳶に半殺しの目に遭わされた、様々な動物がつれてこられます。

百舌(モズ)雀(スズメ)鼠(ネズミ)蛇(ヘビ)牛蛙(ウシガエル)つぐみ・・・

・そこの土の下に身を隠し、死を目前にした、動物たちの感情と攻防を目の当たりにしたブンナは、恐怖と後悔の中で、この世の不思議を知り、大切なことに気づくのでした。

自分語りと感想

この作品のテーマは「弱肉強食」であり、「食物連鎖」なのだろうと思います。

強いものが弱いものを喰らう。それがこの世の理であり、絶対的な法則です。

この世で一番弱いものの方に属する、カエルのブンナから見た、それは、酷く残酷で不条理に感じていたことでしょう・・。

同じく、鳥の中で最も弱い、雀が、我が身可愛さに、ブンナが土の中にいると、百舌に告げ口してしまった後に、ブンナに許しを請いながら、

あたしは、悪い仲間じゃないんだよ、カエルさん・・・。許しておくれ。
ただ、弱いだけなんだ。弱いってことは、悪いことじゃないよね。悲しいことだけど、悪いことじゃないよね。許しておくれ

と、哀訴します。

人間のうちで、この雀を責められる人はいるのでしょうか・・・?

食物連鎖の頂点に立ちながら、ほとんどの人は、虫すら殺せず、誰かが殺してくれた生命をいただいて生きています。

人間は、弱肉強食の頂点にいながら、一番弱い生き物のように感じます。

そして、人間同士の中で、弱肉強食を繰り広げているんですよね・・。

土の中から、成り行きを身守ることしかできないブンナですが、心の中に、いつも優しさを持っています。

それは、ブンナが弱い立場の生き物だからこそ持てる気持ちなのかもしれません・・・。

ここに連れて来られた、動物たちは、虚勢を張りながら、母親を思い出し、そして最後の時まで精一杯、足掻きます。

きっと、生きるとは、そういうことなんだと思います。

最後に、ブンナが見た、この世界の美しさが胸を打つ作品です。

まとめ

正直、本を読むのが好きな私でも、純文学は、敷居が高くあまり好みません💧

しかしながら、大人相手の優れた作家である、水上さんが、全ての人に向けて書いたこの作品は、水上さんの持つ、優しさや慈愛で溢れていると感じます。

そして、死が残酷で恐ろしいことであればあるほど、生が美しく輝き、命を繋ぐ世界の神秘を感じることができるのです。

個人的に、季節は夏が一番好きなのですが、春も大好きです。

寒いのが苦手なので、春を感じると、とても嬉しくなります。

白と灰色と、乾いた茶色だった世界に、緑が芽吹き、色とりどりの花が溢れ、カモが泳ぎ出し、オタマジャクシが見られるこの季節の温みが、ものすごく好きです。

命は繋ぐもの・・・

人間は、何を繋げて行くことができるでしょうか・・・?

お子様と一緒に、食物連鎖を考える、いい切欠になるかもしれません・・・。

うちは、失敗しましたけどね(笑)

よろしければ、お試しください。↓↓